インバウンドの現場と本当のむずかしさ – クレーム対応が多い業界にこそ必要な“受信業務の本質”をまとめました

インバウンド
目次

インバウンドの現場をもう少しだけ正しく伝えたい

近年、士業事務所やクリニックなど、クレーム対応の負荷が高いにもかかわらず、体系的な電話応対ノウハウを持たない業界が増えています。
電話応対は「できて当たり前」のように扱われますが、その背後で働く人たちがどれほど複雑な処理を同時並行で行っているかは、あまり知られていません。

私はこれまでアウトバウンドを中心に仕事をしてきましたが、受信業務であるインバウンドに携わった時期もあり、その両方を経験して初めて見えてきた “電話応対の難しさ” があります。特にインバウンドは、外から見える印象と実態のギャップが非常に大きい業務だと感じています。

インバウンドの現場で実際に起きていること

鳴り止まないコール音の中で働くという負荷

インバウンドの現場では、着信が集中し、コール音が休みなく続く時間帯がありました。
立て続けの入電は心身への負荷が大きく、常に対応を急かされる環境になります。
受話器を置いた瞬間に次の着信が入ることが当たり前で、コール音の残響が耳に残り、
常に追われているような圧力を受けながら業務を続ける日々がありました。
(さらに 待ち呼(まちこ)(別名あふれ呼(あふれこ))ボードが音を立てて現場は軽いパニック状態でした。)

後処理を急かすシステムと感情を可視化するAI

対応が終わった後には入力作業(後処理)が必要ですが、その最中でもシステム上に“怒りマーク”のような急かすアイコンが表示されることがあります。
さらに最近では、顧客の声のトーンから“怒り”“不満”などの感情をAIがリアルタイム表示するシステムが導入され、オペレーター側の心理的負荷は年々増しています

保留とエスカレーションの矛盾

難しい案件はSV(スーパーバイザー)に相談したい(エスカレーションと言います)のですが、そのSVが別の問い合わせで塞がっていることが多く、保留時間を短縮したくてもできない場面が続きます。
しかし折り返し対応にすると、その後繋がらないケースも多く、折り返しが推奨されないという矛盾を抱える現場もありました。

会話と端末操作の同時進行

顧客の言葉を理解しながら画面を操作し、複数の資料やマニュアルを参照しながら案内を進める必要があります。
インバウンド未経験者が最初に驚くのは、音声理解・即時判断・システム操作の“三重処理”が当たり前に要求される点です。
人手不足の現場では、この負荷がさらに重くなっていきます。

「インバウンドは楽」という誤解と実際のギャップ

覚える量が圧倒的に多い

電話はIVR*で鳴り分けされていますが、それでも問い合わせ内容は多岐にわたり、膨大なマニュアルを即座に参照できる能力が必要です。
PC内のどのフォルダーにマニュアルがあるのか、紙ファイルを参照するのか、どの画面からどの情報を引き出せるのか——こうした“瞬間的な判断”が求められる理由は、追加の問い合わせ項目が頻繁に増えていくためです。

*「Interactive Voice Response」の略で電話の自動音声応答システムのこと。
「〇〇の方は1番を」などとガイダンスが流れることがありますが、あれは鳴らす場所を分けているためです。

制約が多い働き方

人的リソースが常に不足気味で、着信が特定の時間帯に集中します。
離席したいタイミングでも席を立ちづらく、場合によっては水を飲むことすらためらわれる状況がありました。
「受けるだけだから楽」という先入観とは真逆の、強い制約のある働き方です。

休みを取りづらい現場構造

多くの現場は、全員がシフト通りに出勤することを前提に組まれています。
急な休みを申し出ても対応してもらいにくいことが多く、
かつて私がいた現場では、自分の代わりに出られる人を探さなければ休みを認めてもらえない運用をしていた時期もありました。
個人事情より「座席の稼働率」が優先される現場構造です。

経験から見えるインバウンドの難しさ

私は長くアウトバウンド業務に携わってきましたが、インバウンドの現場にも身を置いたことで、両者の違いと共通点を立体的に理解することができました。


アウトバウンドでは、相手に伝える内容や話の運びを整える力が求められます。
一方インバウンドは、予測できない問い合わせに対して瞬時に判断しながら処理を進める必要があり、両者では必要なスキルの方向性がまったく異なります。

この経験から、電話応対のノウハウが体系化されていない業界——士業・クリニック・相談窓口など——にこそ、インバウンドの知見は必ず役立つと感じています。
現場の実態を知ることで、クレーム対応の前提や負荷の構造が理解しやすくなり、改善のヒントにつながります。

テレアポアーティスト(テレアポ改善コンサルタント) 咲田哲良(さきたあきら)
咲田メソッド、鋭意作成中です。準備が整い次第お知らせいたします。


📩 取材・講演・出演のご依頼・お問い合わせ

内容を確認のうえ、ご連絡いたします。※営業・勧誘目的のご連絡はご遠慮ください。

▶︎ 法人の方はこちら

▶︎ 個人の方はこちら


著者: テレアポアーティスト(テレアポ改善コンサルタント) 咲田哲良(さきたあきら)
営業と教育を「整える力」で再構築する活動を展開中。
SNSでも最新の気づきを発信しています: XnoteLinkedIn


著者プロフィール: テレアポアーティスト(テレアポ改善コンサルタント)咲田哲良のプロフィールはこちら

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人



咲田 哲良
テレアポアーティスト電話応対・営業教育の実践研究者


「テレアポをアートの域まで高めたい」という信念のもと、
取れる人のコツを構造的に整理し、現場で実践できる形で発信しています。


📩 お問い合わせ・無料相談:
個人の方はこちら
法人の方はこちら

コメント

コメントする

目次