第1章:勤怠不良は「態度」ではなく「構造の乱れ」
スーパーバイザー(以下、SV)の業務の中でもっとも負担になりやすいのが、
勤怠の安定しないアポインター(オペレーター)への声かけです。
上からは「管理不足」と言われ、現場からは距離を置かれやすい――その板挟みがSVを疲弊させます。
しかし、勤怠不良は“やる気の問題”ではありません。
生活リズムの乱れ、家庭環境の変化、睡眠の質、通勤動線、感情の揺れ――
多くは“構造の乱れ”によって起こるものです。
だからこそ、いきなり指摘するのではなく、まずは事情を聴く姿勢が必要になります。
家庭のこと、子どものこと、経済的な不安、人間関係の揺れ。
意外な悩みを抱えていることは多く、決して悪意で勤怠が乱れているわけではありません。
勤怠指導は“注意”ではなく、相手の構造を整える対話から始まります。
この姿勢が、SVという役割の本質でもあります。
第2章:言いづらいことが言えないSVは“聞く力”が育っていない
事情がつかめた時点で、SVとして先に行うべきは上席へのエスカレーションです。
勤怠の問題は、個人の責任に見えて、実際は“組織で扱うべき構造上の問題”だからです。
一人で抱え込むのではなく、情報を組織に戻すことで、アポインターにとってもSVにとっても無理のない解決が進みます。
一方で、一定の割合で「どうしても勤怠が安定しないメンバー」が存在します。
その背景には、モチベーションの揺れ、成績への不安、業務ペースの乱れ、人間関係の負荷など、仕事と密接に結びついた要因があります。
ここを“怠け癖”と捉えてしまうと、対話は一瞬で閉ざされます。
こうした場面こそ、SVの“聞く力”が試されます。
頭ごなしに注意するのではなく、まずは寄り添う姿勢を示し、相手が本音を言える空気を整えること。
怒るのでも、甘やかすのでもなく、“聴ける状態”をつくるのがSVの本質です。
勤怠不良の裏側には、必ず何らかの乱れがあります。
その乱れを責めるのではなく、まずは聞き取り、温度を整え、対話できる状態に戻すこと。
それが、注意よりも先に行うべき「整える力」です。
第3章:勤怠注意の前に“空気”を整える
SVは通話技術だけで評価された存在ではありません。
現場の空気を最も深く感じ取り、アポインターの変化に敏感に気づける人です。
だからこそ、注意を伝える場面でも“相手が話せる空気を整える力”が求められます。
勤怠の話は、人前で扱うと防御反応を生みます。
まずは個別の場所を用意し、相手の呼吸が落ち着く環境を整えることが大切です。
これは、普段の電話対応で身につけてきた「声の温度」「間の取り方」「沈黙への配慮」と同じ構造です。
たとえ自分の中で感情が揺れているときでも、
お客様対応で培ってきた呼吸の整え方を使えば、
相手の表情・声色・間合いに合わせて、適切な言葉を置くことができます。
SVとは、注意をする人ではなく、
“対話ができる状態をつくる人”。
勤怠指導は、空気を整えるところから始まります。
第4章:具体的なフレーズ例
ここからは、実際に面談の中で使える具体的な言葉を紹介します。
大切なのは、言葉そのものより“空気の整え方”です。
相手の呼吸が落ち着く状態をつくったうえで、次のフレーズを置いていきます。
■1. 最初の一声:「最近どう?」
面談の入口では、いきなり本題に入らず、広い解釈ができる一言を置きます。
「最近どう?」
成績の話にも、日常生活の話にも、感情の話にも自然に展開できる“余白を持ったフレーズ”です。
Yes/Noで答えさせず、相手が話したい方向に流れを委ねるための問いです。
■2. 注意が必要なときの“前置き”
どうしても伝えなければならない内容があるときは、言葉より先に空気を整えます。
「これは責めではなく共有なのですが――」
この一言を置くだけで、防御反応が落ち、相手の呼吸が整い始めます。
注意の場面では、言葉そのものより“前置きの温度”が重要です。
■3. 本音を引き出すフレーズ
あまり心を開かない相手には、少しだけ踏み込んだ問いを使います。
「何かお困りごとはありますか?」
これは“問題を指摘するための質問”ではなく、
“話しても大丈夫という許可を渡す質問”です。
相談してもよい空気をつくるためのフレーズです。
■4. 具体的な選択肢を示す
家庭環境や体調の問題で勤怠が乱れているケースでは、
相手が「どうしていいか分からない」状態に陥っています。
その場合は、現実的な選択肢を静かに提示します。
「週3日にする案もありますよ」
勤怠不良の背景には、“選択肢の不足”が原因で迷っているケースが多くあります。
選択肢を見せることで、相手は自分の状況を整えるきっかけをつかめます。
実際に私自身も、勤務日数や時間を調整していただいたことで、呼吸が整い、本来の働き方を取り戻せた経験があります。
働き方の構造を整えることは、勤怠を責めることよりもずっと大きな力を持っています。
第5章:SV自身の温度の整え方
どれだけ応対能力の高いSVであっても、人間である以上、感情が揺れる瞬間は必ずあります。
勤怠の話は繊細で、自分の中の温度が乱れたまま向き合うと、言葉の角度や声の強さが微妙に変わり、相手の防御反応を引き起こします。
だからこそ、注意を伝える前に“自分の温度”を整えることが欠かせません。
まずは腹式呼吸で呼吸の深さを取り戻し、自律神経を安定させます。
浅い呼吸のまま話をすると、声が上ずり、テンポが速くなり、相手の呼吸も連動して乱れていきます。
逆に、ゆっくりと息を落とすだけで、声の波が静まり、相手の緊張も自然に和らぎます。
普段の電話応対で培ってきた
「声の高さを整える」
「テンポを合わせる」
「一拍の沈黙を置く」
という技術は、この場面でもそのまま生きます。
注意の成功は、言葉の選び方ではなく、SV自身の“温度”で決まります。
自分の声と呼吸を整えることが、相手の心が開くための最初の準備になります。
第6章:勤怠改善は「指導」ではなく「共同行動」
アポインターはどうしても“個人プレイ”で仕事を進めがちです。
一方で、SVや会社の視点では“チームで整えていく仕事”です。
この認識のズレが、勤怠の乱れやコミュニケーション不全を生む原因になります。
SVという役割は、個と組織をつなぐ「橋渡し役」です。
アポインターの状況を理解しながら、組織の要件も整理し、双方が無理なく動ける状態をつくることが求められます。
個別面談では、まず自分の体験を一つ話してみることが効果的です。
自分の弱さや迷いを少しだけ開示することで、
相手の緊張がほどけ、心の扉が開きやすくなります。
一度「この人は信頼しても大丈夫だ」と感じてもらえたら、
勤怠だけでなく、日々の些細なことでも共有しやすくなります。
勤怠改善とは、指導ではなく“共に整えていく行動”なのです。
ここでも、電話口でお客様と向き合うときと同じように、
呼吸を整え、声の温度を整え、相手の状態に寄り添う力が求められます。
勤怠改善は、結局のところ“整える力”の延長線上にあります。
エピローグ
勤怠の乱れは、個人の弱さではなく、日々の生活や心の構造が揺れている合図です。
その揺れを誰か一人の責任にせず、対話を通じて共に整えていく姿勢こそ、SVという役割の本質です。
注意とは、相手を咎める行為ではありません。
相手の呼吸を整え、自分の言葉を整え、淡々と向き合う“共同作業”です。
チームが安定して動き出すとき、その中心には必ず、静かに空気を整えているSVがいます。
声の温度を保ち、間を読み、相手の想いを受け止める人がいます。
勤怠を整えるとは、働く人の心を整えること。
そしてそれは、現場を支えるSVだけが担える、大切な仕事のひとつです。
現場で抱えている悩みや相談があれば、公式サイトからお声がけいただければお応えします。
SVという役割を支えることも、私の大切な仕事の一つです。
些細なことでもお気軽にこちらまでご連絡ください。
テレアポアーティスト(テレアポ改善コンサルタント) 咲田哲良(さきたあきら)
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著者: テレアポアーティスト(テレアポ改善コンサルタント) 咲田哲良(さきたあきら)
営業と教育を「整える力」で再構築する活動を展開中。
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著者プロフィール: テレアポアーティスト(テレアポ改善コンサルタント)咲田哲良のプロフィールはこちら

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